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SS・・・書いてみた・・・

                【ナニカガスムイエ】



* タイトル通り、元ネタは2007年7月6日より開催されていたECOイベントです。
* NPC等の会話文を多少いじってます。
* 誤字・脱字などはご了承ください。
* かなりの長文となってます。
* 初めて書いたSSなので読み苦しいところがあるかと思います。
  それでも宜しければ【続き】を押して下さい。









「夏か・・・」

 どこまでも広がる青い空 時折みせる入道雲
 海へ行こうと水着姿でタイニーアイランドに向かう冒険者達
 長い長い夏休みを迎えたアップタウンは今まで以上に賑やかになっている。



「今年の夏は何しよっかなぁ~・・・」

 姉貴に留守番を任された俺は、今、一人寂しくアップタウンをうろついている。
 いつもいつもアレンやアムニスを連れて出かける姉貴・・・
 たまには俺だって、一緒に出かけたいんだぞ!
 なぁ~んて・・・かっこ悪くて言えるかっての・・・
 って・・なんで俺・・・拗ねてるんだ?
 子供じゃあるまいしっ!
 あぁ そうか!留守番なんかせずに一人で外に出たっていいじゃないか!
 たまには・・・こぅ・・・ワクワクしたいしな・・・うん!

 そうして俺は、いつもの特大リュックに荷物を詰め込み出かける準備をした。

「よし!いざ出陣!!!」

 俺は勢いよく家を飛び出し、アップタウンを東方面に走り出した。

「ん?」

 ふと視界に入ってきた一軒の家。
 以前から気になっていた家だ。
 玄関前に柵が張られて中に入ることができない、立ち入り禁止札の出ている謎の家。
 幽霊が出るとか家の中に入ったら出てこれなくなるとか・・・妙な噂が流れてる。
 そんな家の前に誰かが突っ立っている姿が見える。

「・・・・あいつは・・・」

 なんとなく・・・吸い寄せられる様にその家の前に立ってるヤツの元へ足が動く。

「おぉっ!桜の葉っぱを捜すのを手伝ってくれたグランさんじゃないッスか!おひさしぶりッス!」
「あぁ・・やっぱりグリーディか!何やってんだこんなとこで?」
「相変わらず元気そうッスね!実は今イベントやってましてね!グランさんもどぅッスか!?」
「イベント?」
「そうッス!夏をヒンヤリ楽しめる『お化け屋敷』を俺たちが作ったんですよ!ちょっとしたスリルを体験してみないッスか!?」
「ふ~ん・・・お化け屋敷ねぇ・・・」
「あれあれ?もしかして・・・・怖いんッスか?ククク」
「・・・あっはっはっは!俺に怖いもんなんかあるかよ!よし・・せっかくだからチャレンジしてやるぜ!!」
「さすがグランさん!ささっ 中に入って下さい♪最初に中に居るクリムから少しだけ説明あるんで!」
「おうよ!」

 グリーディに背中を押されながら、俺は家の中に入った。
 照明を薄暗くしただけの部屋なのに、妙に涼しげな空気が漂っているのは、自分の思い込みなのか・・・
 それとも、これも演出なのか・・・

「やぁ よく来たね。この恐怖の屋敷に。・・・。中に入ってもらう前に一つ。この屋敷に
は色んな仕掛けがしてあるんだ。その仕掛けを解かないと外に出られない仕組みになって
いるんだよ」
「へ~ じゃぁ そう簡単には出られないってことか・・・面白そうじゃね~か!謎解き
なら俺の得意分野だ!受けて立つぜっ!」
「ふふふ 自信満々だね・・・。入り口はそこの扉だよ。途中ギブアップしたかったら、
中に居るパルルに声をかけるといい。非常出口に案内してくれるはずだよ。」
「はは!俺には必要ないさ!じゃ ちょっくら行きますか!」
「・・・・・・・・・ふふ・・・何も起こらなければいいけどね・・・」

               ◆◆◆

 入り口より、もっと暗く感じる家の中。
 なんの曲かはわからないが・・・かすかに聞こえてくる音楽と効果音。
 部屋の中を歩くたびギィ・・・ギィ・・と床が悲鳴を上げている。

「・・・・結構 本格的だな」

 もっと、子供騙しみたいなお化け屋敷を想像していたから思わずこんな言葉がこぼれてしまった。
 周囲を見渡してみたが、とくに誰かが脅かしてきそうな気配はない。
 ひとまず、クリムが言ってた様に謎解きをしないとな・・・。
 まぁ、まずは・・・各部屋を見てまわらないと、だな。どこを謎解きしないといけないのかが判らないんじゃ話しにならない。
 屋敷の中をまっすぐ歩いていると中央付近に上りと下りの階段がみえた。
 左側に上る階段。右側に上る階段と下りる階段の三分岐。

「ふむ・・・どっちに行ってみるかな・・・」

 とりあえず、先に目に付いた左側にある階段を上ってみた。
 上った先に扉が一つ。何の迷いもなくドアのぶを回してみた。が、どうやら鍵がかかってるようだ。ガチャガチャと音が鳴るだけで扉は開きそうにない。

「・・・・・なるほど 鍵を探せか・・・」

 最初の分岐地点に戻り、今度は右側にある階段の前に立った。

「上か・・・下か・・・」

 なんて・・・階段の前で悩んでも仕方ない!こんなもんは勘で動くのが一番だ。
 さっきと同じ様に上に上ってみる
 扉だ。
 ドアのぶを回してみると、ギギギギィと小さな音を立てながらゆっくりと開いていく。

「・・・・・・」

 広い部屋だった。
 机があり、その上にはランプが置いてある。壁には古い絵が数枚飾ってあった。
 一体何年前の絵なのだろうか?
 ボロボロになった絵はひどく痛んでいて、あちこち破れている。

「…なんだ?」

 絵を眺めていると、破れた場所の辺りが人の顔に見えてくる。
 なぜだろう・・・。ただ立っているだけなのに・・・・絵を見ているだけなのに・・・
 背中に汗がにじみ出てくるのがわかる。
 ゴクリと生唾を飲み込みながら、古い絵に近づき触れてみた。

カチャ・・・

 どこか遠くの方で鍵の開く音が聞こえた。

「・・・・なるほど。仕掛けか・・・」

 思わずフゥっと深呼吸をしてしまった。
 何を怖がってるんだか・・・。ただのお化け屋敷なのに。
 苦笑いをしながら、鍵の開く音がした部屋へ向かってみる。
 どうやら、最初に来た部屋の扉が開くようになったらしい。
 ゆっくりと扉を開けようとしたその時!

タッタッタッタッタッタ・・・

 後ろから足音が聞こえてきた!!

「!?」

 反射的に後ろに振り返ってみたが、そこには誰もいない。
 気のせい…なのか?
 それにしては、ハッキリと聞こえた気がする。
 でも、今ここに居るのは俺だけで・・・・ドアのぶを持ってる手にジワっと汗が出てくる。

「・・・・なんか薄気味悪くなってきたな。さっさと出るか」

 足早に部屋の中に入って周囲を見渡してみる。
 目に留まったのが、なにかの台の上に無造作に置かれているマリオネット。
 これも・・・演出のひとつなのか?なんかずっとここに置いてある感じなんだけど・・・。
 なんとなく横たわっているマリオネットに触れてみた。

(!!??)

 か・・・体が動かない!?
 何かに縛られたわけでもなく・・・
 上に何かが乗っかってるわけでもない・・・
 足先から指先まで、どこを動かそうとしてもピクリともしない。
 それと同時に声も・・・出すことができない。

(な・・・なんだよ・・・!?どうなってるんだ?)

タッタッタッタッタッタ・・・

 再度 誰かの足音が聞こえきた。そして今度は・・・その足音が扉の外で止まる。

(な・・・何かが・・・扉の外に居る・・・のか!?)

 そして、少女のようなか細い声が聞こえてきた。

「鍵を・・・さがして・・・。暗くて・・・深いところに・・・隠したの・・・・・・。時を刻む箱の下に・・・。その鍵があれば・・・扉を開けたままにしておくことができるの・・・。そうしないと・・・ココカラゼッタイニ・・・・・デラレナイ。」

(!?)
 声が聞こえなくなったと同時に、俺の体を繋ぎとめていたものがフッと外された・・・

「・・・・」

 思わず自分の両手を目の前で握ったり開いたりしてみる。
 とくに違和感はない・・・・が、さっきまでは確かに動かなかった。

「なんだったんだ・・・今のは?あの声・・・とてもじゃないが、ただの演出とは思えないぞ・・・・」

 妙な不安感と恐怖が、じょじょに俺を蝕んでゆく・・・・。
 ギブアップをして外に出るか?
 いやいや、そんな事はしたくない。それよりも・・・・気になる。
 さっきの声の主が一体誰なのか・・・
 妙な空気が漂うこの家の謎も・・・・
 なぜ?と問われると答えづらいが・・・なんとなく、今、ここを出てはいけない気分だった。

(やってやるか・・・・・)

 その場で深呼吸をした俺は、さっき聞こえた言葉通り鍵を探すことにした。
 暗く・・・・深い場所・・・・
 時を刻む箱・・・・・・これが唯一のヒント

(そういや、下に続く階段があったな。行ってみるか)

 階段を前にし、無意識に足の動きが止まり、額から一筋の汗が流れてくる。
 微かに震える右手をギュッと握りしめ、地下へと続く階段を一段・・・また一段とゆっくり降りて行った。
 辿り着いた先に大きな時計が立っている。

(時を刻む箱・・・うん・・・きっとこの時計のことだな・・・)

 時計に近づき、鍵がないか調べてみたとこ、奥の方で何かが光ってるのが見えた!
 俺は勢いよく右手を中に入れて、光ってる物を取ろうとした。

(・・・・うっ)

 また体の自由がきかない!?
 しかし、この体制はきつい・・・・って こんな時に何を考えてるんだ俺・・・
 さすがに二度目ともなると慣れてしまうものなのか?
 とにかく、早く解けてくれ!!

タッタッタッタッタ・・・・

 また、足音が聞こえる。
 今度はすぐ近くに・・・俺の背後に誰かが立ってる!?
 振りむこうにも、金縛りにあったままで確認することはできない。
 ドキドキドキドキと心臓の音が早くなっていく。

「うふふふ・・・あはははははは!!」

 突然の笑い声に全身が震え上がった!と思ったら金縛りが解け、後ろに倒れこむ・・・。

「痛ってぇ・・・・」

 さっきまでの緊張感が吹っ飛んだ。
 お尻をさすりながら立ち上がり、右手に握っている物を確認する。
 鍵だ・・・。

「やれやれ。本当にどうなってるんだこの家は・・・。これが全部あいつらの作った物だったらマジですごいぜ・・・」

 額の汗を拭いながら、その場を見渡してみる。
 さっき感じた人の気配は消え、静寂が戻ってきていた。

「とにかくこの鍵を使えば外に出られるはずだ!」

 足早に1階へ戻り、一番奥の部屋の扉に鍵を差し込んでって・・・・この扉鍵穴ないじゃん!
 どこか他に仕掛けがあるのか?
 もう一度それぞれの部屋に戻ってみよう。

               ◆◆◆

 最初に入った、絵が飾ってある部屋に戻ってきてみた。
 あの時は、絵に気を取られてたから他の場所をちゃんと見てなかったからな。
 部屋の中をゆっくり歩いてみる。

「お?」

 机の上に何やらスイッチみたいなものを発見。よくみると鍵穴らしきものが・・・。
 迷わず、さっき拾った鍵を差し込み、ゆっくりと回してみる。

カチャ・・・

 1階から鍵が開く音がした。
 きっと、奥にあった部屋の扉の鍵が解除されたんだ!
 俺は急いでその場所へ向かい、ドアのぶを握りしめ扉を開けた。

「うぉ!!??」

 部屋に入ってみると、一人の少女が立っていた。よく見ると、少女の体は透けていて、後ろに置いてある本棚が見えている。

(・・・・ホログラフか?)

 そっと近づき、少女に触れようとした瞬間、またもや金縛りに・・・。そして、目の前に居る少女の口が動き始めた。

「ふふふ・・・。ないの・・・。さがしてるのに・・・ぜんぜんないの・・・。お姉ちゃんもいなくなったの。・・・・・・ここにいないの。」
(さっきまでの声の主はこの子だったのか・・・。それにしても探してるっていったい・・・)

 相変わらず、金縛りに合うと声も出せないようだ。

「ずっと探してるのに、ないの。ずっと・・・・・・ず~っと前から探してるのに・・・・。うふふ。でもいいの。代わりが・・・みつかったから。お姉ちゃん・・・安心してね。この人が代わりをくれるから・・・。ねぇ?ちょうだい?ちょうだい・・・それ・・・。ほしいの・・・」

 嫌な予感がする。
 これまでにないぐらい、体全体から汗が流れでてきているのがわかる。

「・・・・っ !? 声が・・・出せる?・・・・・・・・ふぅ・・・なぁ?あんたは何を欲しがってるんだ?」

 声が出せるようになってホッとしたのもつかの間、気がつけば目の前に少女の顔がある。
 そして、少女のまぶたがゆっくりと開いていく。
 ビクッ!!と全身が震え上がった。
 少女のまぶたの中は空洞になっていた。そう・・・眼がないのだ!
 息がつまるようなプレッシャー。耐えかねた俺は、ついもう一度質問をしてしまった。

「・・・・な・・・なにが・・・欲しいんだ?」
「だから・・・言ってるでしょ?ちょうだい・・・あなたの・・・その目玉を!!!!!」
「!!!!」

               ◆◆◆

「ホホホホ♪無事に出てこれたみたいねん♪おめでとうグラン!その勇気を称してこれをあげるわ~♪」

 聞き覚えのある声がして、ゆっくりと目を開けてみた。
 気がつけばアップタウンに戻ってきている。目の前に居たのは先ほどの少女でなく、ミーシアだった。

「どうしたのかしらん?」

 戸惑いが隠せない俺の顔を見て、ミーシアが不思議そうな表情を見せる。

「・・・・・いや・・・・なんでもない・・・」

 さっきのアレは・・・夢だったのか?
 幼い少女が居て、その少女には眼がなくて、俺の眼を奪おうとして・・・・

「そうそう!よかったらアンケートに答えてくれないかしらん♪お化け屋敷はあたいがプロデュースしたのよぉん♪だから結果が気になってねぇ♪」

 ミーシアの声に、ビクッと反応してしまう俺。
 なんだかんだでビビってたのか?

「大丈夫?」
「ん・・・あぁ。えーとアンケートだっけ?」
「そうなのよぉん♪待合室・本館・絵がある部屋・マリオネットの部屋・地下室どこが印象に残ったかしらん?」
「ん?一部屋足りない気が・・・・」
「ほぇ?ないわよぉん?」
「いや、そんなことは・・・。幼い少女のホログラフがあった部屋だぜ?」
「・・・・・え?」

 ミーシアの顔が引きつった表情に変わる。
 まさかとは思いつつ、俺は家の中であったことを話してみた。

「・・・正直なところ、やっぱりねぇんって思ったわぁ。実はこのお化け屋敷作る時に、たまに変な気配がしてねぇ・・・。どうしても何かが居るみたいで・・・。この家にまつわる噂話は知ってるかしらん?」
「姉妹がどーのこーのってやつだよな?少しだけなら聞いたことあるぜ」
「実はねぇ・・・あれ・・・アクロポリスシティに伝わる噂と実話をもとにしてるのよねぇん。この家にはエミルの姉妹が住んでいた。ところがある日、この家は崩壊してしまったのぉん。事件か事故か・・・詳しくは記録が残ってなかったから調べきれなかったけど・・・。その時に姉は助け出されたけど、妹はそのまま家の中に閉じ込められたって話しなのよぉん。」
「・・・・・・・崩壊したはずなのに、なんで今でも家が建ってるんだ?」
「そりゃぁ・・・この家は、その崩壊した家の跡地にそのまま建ってるんですもん」
「!?」
「ねぇ?その女の子って『お姉ちゃん』って探してたのよねぇん?」
「・・・・あぁ」
「・・・・・・助けられたお姉さんなんだけど、その後無事に遠くで暮らしてたみたいなのねぇん。だけど・・・妹を助けてあげれなかったって、随分悔やんでたみたい。ねぇ?よかったらもう一度家の中に入って、その少女にこれを渡してみてくれないかしらぁん?そうそう!妹の名前は『エリス・リリィ』って言うらしいわよぉん」

 ミーシアから一枚の絵を受け取った。
 どこか寂しげな顔した一人の女性の絵。
 あの少女のお姉さんなんだろうな・・・。

「・・・・わかった。もう一度行ってくるぜ。あの女の子も気になるしな!」
「よろしくねぇん♪」

 俺は受け取った絵を大切にポケットにしまった。
 もう一度家の中に入ろうとした時、脇道に散乱している家具の中で何かが光ってるのに気がついた。吸い寄せられるように、その光ってる物を手にしてみる。小さくて黒い玉のようなものだった。どこか不思議な感じで、見惚れてしまいそうになる黒い玉。
 直感だけど、あの少女の為にもこの玉は必要なんじゃないかと思い始めた。
 俺は拾った黒い玉を握り締め、ポケットの中にある絵を確認すると、あの少女が居ると思われる部屋へ向かった。

               ◆◆◆

 さっき入った時よりも空気が重い感じがするし、一歩、また一歩と歩くたびに冷たい冷気なようなものも感じる。明らかに、最初の頃とは雰囲気が変わっていた。
 とにかく、あの少女が居た部屋へと足を運んでみる。

ガチャガチャ・・・

 一番奥の部屋を開けようとしてみたが、どうやら鍵が閉まっているようだ。
 仕方なく、各部屋へ行ってみようとした時、どこからともなくあの少女の声が聞こえてきた。

「ウフフフ・・・私に・・・逢いたいの?だったら、絵を調べて・・・・。私の絵・・・。それから、深い・・・深い・・・・・・どこまでも暗い穴も調べてみて・・・。全部調べ終わったら・・・・地下室へ来るといいわ・・・。」

 やっぱり夢じゃない!あの子はこの家の中に居る。きっとどこかで俺を見ているんだな・・・。
 俺は少女の言葉通り、絵が飾ってあった部屋に行ってみた。

「・・・・この絵は・・・・あの少女の絵だったのか。隣に一緒に書かれてるのは・・・お姉さん・・・だったのかな・・・。ん?」

 絵が飾ってある向かい側に設置されたテーブルに視線が止まる。テーブルの上を見てみると、丁度腕が入りそうな穴がぽっかりと開いていた。
 恐る恐る覗いてみるとキラリと何かが光ってみえた。鍵でも落ちてるのだろうか?
 ゆっくりと、その穴に手を入れてみた。
 案外深いが、指先になにかが触れた感じがした。

(ん?これはなんだ?・・・・・・・・・・何か・・・が・・・何かが・・・俺の腕を・・・掴んでる!?)
「うっ・・・わあああぁぁぁ!!!!」

 思わず叫び声を上げながら、穴に入れていた腕を引き抜いた。
 ハァハァと息が上がる。グィっと額ににじみ出た汗を拭いながら、穴の中をもう一度覗いてみる。
 暗くてよく見えないが、確かに何かが光っている。穴の奥底でキラキラと何かが・・・

「ミツケタ・・・・ミツケタ!!それが・・わたしの!アハハハハハ!!!」

 少女の声がしたかと思うと、覗いていた穴から白く細い手が俺の眼に向かって伸びてきた!

「っ!?・・・うわあああっ!!!!」

 ガタガタッ!と、反射的にテーブルから離れる俺。
 その拍子に、足元に置いてあった椅子を蹴飛ばし大きな音を立てて倒れる。
 ・・・・・・・
 シーンとした静寂の中、自分の荒い息遣いだけが部屋中に響く。

(さっきより・・・やばくないか?これ・・・)

 ハハハと思わず苦笑いが漏れる。
 薄暗い家の中で、殺気が満ちた少女と自分一人だけという不安感と恐怖感。
 自然に手や足が震えてくる。
 大丈夫・・・大丈夫だ!何度も自分に言い聞かせ、乱れた呼吸を・・・鼓動を沈める。
 念の為にさっきの穴を覗いてみたが、光も少女の手もなく、どこまでも続く闇だけだった。
 ふぅっと安堵の息を漏らし、もうこの部屋に用はないだとうと思った俺は、次の部屋へ行くことにした。

               ◆◆◆

 次に向かった先は時計がある地下室。
 ここから、あの少女が居る部屋へ行くことができるのだろうか・・・。
 周囲を見渡してみたが、とくにどこかへ通じる扉があるわけでもないようだ。
 地下室へ行けと言われたものの・・・どうしたものか。
 意味もなく、この場所を指定するとは思えないし・・・。きっと何かがあるのかもしれない。
 ちゃんと探してみなくては・・・。

 時計が置いてある付近を調べていたら、壁に小さな穴が開いてるのに気がついた。
 ゴクリと喉を鳴らしながら、その小さな穴を覗いてみた。
 かなり奥だが、何かが見える。薄暗いが・・・何かの部屋が見えた。
 ジーと見ていると部屋の真ん中にあの少女が立っているのが見えてきた。
 微かに口が動いている。

「ないの・・・どこにもないの・・・・」
(やっぱり自分の眼を探してるのか?でも、そんなものこの辺にはなかったし・・・)
「フフフ・・・あははは♪ 居るんでしょ?そこに・・・居るんでしょ?わたしの・・・わたしの大事な物を持って!!」

 まぶたを見開いた少女の顔が、突然俺の方に向いて近寄ってきた!

「うわっ!!!!」

 瞬時に壁から離れた俺は、時計を背もたれにしてその場に座り込んでしまった。

「・・・はぁ・・・なんで・・・こんな穴から覗いてるのに気がつくんだよ。それにしても、俺を見ながら大事な物を持ってって言ったよな・・・今。俺が持ってるのは絵と・・・この黒い玉。
・・・・・・・・・まさか・・・」

 おもむろに立ち上がった俺は少女が居ると思われる部屋の前まで走った。
 深呼吸をし息を整えると、ゆっくりと扉を開けてみた。
 キィーと小さな音を立てながら、少女が居る部屋の扉が開いてゆく。
 中に入ると、やはり部屋の真ん中にさっきの少女が立っていた。

「うふふ・・・ないの・・・。さがしてるのに・・・・ぜんぜんないの・・・。お姉ちゃんもいなくなっちゃったの。ここに・・・いないの・・・・・・」

 最初に来た時と同じように、金縛りにあう。だけど・・・少し圧力が弱い気がする。まったく体が動かない訳じゃなさそうだ。
 気が付くと、手に持っていた黒い玉が微かに光っているのが見えた。

「待てよ!!」

 少しづつ近寄ってきてた少女の動きが止まる。
 俺は、軽く目を閉じ一呼吸し、ゆっくり目を開きながら少女をまっすぐ見つめ質問をした。

「・・・・あんた・・・・だれだよ?」
「しらない・・・」
「じゃぁ・・・あんたが探している物はこれか?」

 手に持っていた黒い玉を少女の前に差し出す。
 少女は黙ってソレを見つめると、小さく頷いてみせた。

「・・・・どうして・・・あなたがそれを持ってるの?」
「拾ったんだ。この家の外でな。・・・・・もしかしてさ、ここに住んでいた姉妹の一人?妹の名前が『エリス・リリィ』らしいけど、この名前に聞き覚えはないか?」
「その名前は・・・・・聞いたことが・・・ある。わたし・・・わたしの名前は・・・エリス?」
「やっぱりな・・・」
「出ていって・・・・・・」
「え?」
「出ていってよ!!!」
「!? うっわ!」

 突然、目の前に眩い光が放たれたと思ったら、俺は部屋の外へ追い出されていた。
 ・・・・・なぜだろう?なんか・・・いきなり追い出されたせいか、妙に腹が立つ。
 俺は再度、少女が居る部屋に入って行った。

「また来たの?」
「来たら悪いのかよ!?・・・・コレ・・・あんたのなんだろ?」

 もう一度、黒い玉を少女の前に差し出してみる。

「・・・・・・あんたは・・・なんでここに居るんだ?」
「目が・・・ないの。だから・・・・ずっと・・・・探しているの。お姉ちゃんもどこかに行っちゃったから。どこにあるのか・・・わからないの・・・」
「ふむ・・・。なぁ・・・あんたが言う『お姉ちゃん』ってこの人か?」

 物静かな雰囲気がする女性が描かれた絵を取り出し、少女の前で広げてみせた。
 すると、その絵から柔らかい光が放たれる。
 それを感じ取ったのか、目の前に居る少女の顔つきが変わった。

「・・・やっぱりそうだったんだな。あんたの姉さんはこの家が崩れたときに助け出されて、遠くで暮らしてたらしいぜ。ぁ・・・・・・これ返すよ」

 俺は握り締めていた黒い玉と、女性の絵が描かれていた紙を少女に渡した。
 少女は、黒い玉と絵を大事そうに抱きしめながらまぶたを閉じ、少し経って、ゆっくりと目を開いた。そこには、すごく穏やかな瞳をした少女が立っていた。

「ありがとう・・・。わたしはずっと・・・これを探していたの。・・・お姉ちゃんは無事だったんだね。わたしがこの部屋にいたときに、家が崩れてしまった。・・・怖かった。そのときに、目もなくしてしまって・・・。それ以来、ずっとお姉ちゃんと目を探していたわ。お姉ちゃんもどこかに閉じ込められているかもしれないと思って。何年も・・・さ迷い続けてしまった・・・・。そして、いつしかお姉ちゃんを探し、目を探してさまようだけの存在になってしまったのかもしれないわね。
さっき言ってたよね?『遠くで暮らしていた』って・・・。お姉ちゃんは幸せだったのかな?」
「あぁ・・・。すごく幸せだったみたいだぜ。でも・・・後悔もしていたらしい。妹を助けられなかったって・・・。最後まで・・・言ってたらしいぜ・・・」
「・・・・・・・待ってて・・・くれてるかな?わたしのこと・・・」
「んなもん、当然さ!」

 俺の言葉に対して、エリスがにっこりと微笑んだ。
 その笑顔は、この家をさ迷っていた時の面影はどこにもなくって・・・すごく優しい笑顔だった。
 エリスは最後に一言、小さな声で「ありがとう」と言ってその場から姿を消していった。

               ◆◆◆

 家から出てきた俺は、夏の青空を見上げていた。
 すがすがしい気分だけど、少し・・・寂しい気分でもあった。
 大切なものを探す為に、何年も同じ場所に居るのはどんな気持ちなんだろう・・・。
 
「母さんは・・・・大丈夫・・・だよな・・・」

 思わず、母さんの寂しげな顔が脳裏に浮かんできた。
 
「こらぁ~グラン!留守番頼んでおいたのに何してるの!!」
「げっ!パニ姉!」
「もぅ!今日は紗羅も出掛けてるからあんたに留守番頼んでおいたのに!って・・・・どうした?泣きそうな顔して・・・・」
「!?」

 俺は慌てて顔を横に振った。

「な・・・なんでもねーよ!気のせいだろ?」
「・・・・・・そう?」
「・・・・・・・・・なぁ、パニ姉?母さんってさ、今、どこにいるのかな?寂しくしてないかな?」
「そうだなぁ~・・・母さんのことだから花がいっぱいあって湖があるとこで私達のこと見てるんじゃない?寂しい・・・かもしれないけど、私達が笑顔で元気でいたら、母さんだって同じさ!」

 姉貴は空を見上げながらクルリと一回転すると俺の顔を見て微笑んだ。
 つられて俺も笑ってしまった・・・。
 そして、母さんの笑顔も・・・浮かんできた。

「よし!グラン今度一緒に狩りに行こうな!」
「・・・いいのか?」
「最近一緒に行動してなかったからな・・・。久々に行くべ?」
「・・・お・・・おう!」

 ギュッと自分の手を握った時、違和感が走った。
 そっと手の中を見ると虹色に輝く髪飾りを持っていたことに気づく。
 きっと、エリスからの贈り物・・・かな?



 どうか・・・・
 あの子も・・・ずっと笑顔で・・・
 姉さんと一緒に居られますように・・・・

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