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Short story



  - クリスマスの思い出 -
    (幼き頃の記憶)

                      【第一章】





「ねえちゃん!ねえちゃん!」
「ん?」
「ことしもサンタさんってくるよね?」
「あ、あたりまえでしょー!」
「へへ~♪たのしみだねー」
「・・・うん!さぁ、早く帰ろう。さむいよっ」


 自分より小さな手をぎゅっと握り、お互いの肩を寄せ合いながら、今年初の粉雪が舞う
 中を帰宅する二人。

 孤児院に預けられ、初めて迎えようとしていたクリスマスに、期待と不安を隠せないパニ
 とアムニスの姿があった。
 今までとは違う生活。
 父も母も居ない分、孤児院に住まう見知らぬ、大勢の子供達とその子供達の世話をして
 いる一人の女性、
 セレスと共に過ごす日々に、幼かった二人は緊張・戸惑い・不安を抱かずにはいられな
 かった。


「・・・た、ただいま」


 家の扉を開けると、部屋中を暖めていた空気と子供達の賑やかな声の波に襲われ、反
 射的に目をつむってしまうパニ。
 それと同時に、温かい何かがパニの頬を包み込んだ。
 そっと目を開けるパニの目に映ったのは、両手を差し出し、優しい笑顔をしたセレスの姿
 だった。


「お帰りなさい。寒い中ご苦労様」
「・・・ん」


 なんとなく照れ臭かったのか、慌ててセレスの手を払いのけ、視線を逸らし、頼まれてい
 た買い物の品が入っているバッグをセレスの前に差し出す。


「ふふ。ありがとう」
「・・・う・・・ん」


 バッグを受け取りながら、セレスはパニの頭を優しく撫でる。と、その時、


「クシュンッ・・・」


 パニの後ろにくっついていたアムニスが鼻水を垂らしながら、その様子を伺っていた。


「あらあら!大変!こんな所に居たら風邪を引いちゃうわね。さぁ、暖炉の前に行きましょう。ホットミルクも用意するからね」


 そう言って、パニの後ろでもぞもぞしていたアムニスを抱き上げると、急ぎ足でその場か
 ら離れ、暖炉の前にアムニスを連れて行く。
 その間も、セレスの周りには小さな子供達が駆け寄り、僕も私もと抱っこをせがむ。
 そんな子供達に対し、嫌な顔一つせず、
 「あとでね」と笑顔で答え、一人一人の頭を撫でていくセレスの姿を、パニは無言で眺め
 ていた。


「・・・・・・・」


 両手を握り締め、唇を噛みながらも自分に言い聞かせる言葉があった。
 「我慢」と・・・。
 自分だってもっと甘えたい。頭を撫でられ、抱きしめて欲しい・・・と。
 しかし、ここに居る子供達は自分よりも幼い子達が多かった。皆、両親を失い同じ境遇
 の子ばかり。
 一人だけ我が儘なんて言えない。まだ10歳で在りながらも幼き子達から見れば
 「お姉ちゃん」な存在。
 代理母でもあるセレスを独り占めするなんて出来る訳が無かった。
 
 パニは小さくため息をつくと、玄関の横に着ていたコートを掛け、冷え切った体を擦りな
 がら暖炉の前にあるソファーへと身を委ねる。
 目の前に差し出されたマグカップを両手で持ち、熱々のミルクを口に含む。お砂糖を加え
 たのだろうか。ほんのり甘いホットミルクが、冷え切った体を温めていくのがわかり思わ
 ず安堵の息が漏れる。
 ふと、隣にある大きな窓に目を向けると、賑やかな部屋とは対照的に、先程まで吹雪い
 ていた粉雪が大粒のボタン雪に変わり、シンシンと外を積もらせ真っ白な世界へと変え
 てゆくのがわかった。


(・・・明日は・・・みんなで雪遊びかなぁ~)


 口元に笑みを浮かべながら、明日は何をして遊ぼうと考えるパニ。
 きっと朝になれば外は全て雪に覆われているだろう。
 小さい子達の歓喜と雪の中を駆け回る皆の姿を想像しながら、手に持っていたカップの
 中身を飲み干す。


「ぱーにー!あそんでー!」
「おねえちゃん。あそぼ~」


 マグカップをテーブルの上に置いたと同時に、後ろから飛びついてくる小さな子達。
 


「うっわ!・・・もうすぐ晩ご飯だよー?」
「しってるー!それまであそぼ!」
「あそぼ!あそぼ!」


 無邪気な笑顔を見せ、パニの両腕を引っ張る。
 チラリと隣に座っていたアムニスに目を向けると、暇そうな足を上下にバタバタさせなが
 ら、同じようにパニの様子を伺っている。
 今まで姉を独り占めしてきたのに、それが出来なくなった事への不満があるのだろう。
 家に居る間は、目が合うとぷいっと視線を逸らすようになった。アムニスもまた、自分の
 欲を我慢しているのだろう。


「・・・アムニス。おいで。みんなと遊ぼう」


 手を差し出し、笑顔を向ける。
 その言葉を待っていたかのように、ソファーから降りたアムニスは無言でパニの足元と差
 し出された手に絡みつく。
 力いっぱいパニの服を握り締め、寂しさを紛らわすかのように顔を埋めるアムニスの頭を
 優しく撫でてやると、上目遣いに視線を合わせてくれる。 


「へへ・・・」


 嬉しそうな表情と漏れた笑い声に、思わずパニも笑ってしまう。



 今日も賑やかで笑い声の絶えない一夜が過ぎようとしてた。
 寂しさも不安も、皆と一緒に居ることで紛らわす事ができる。
 いつか、自分の両親が迎えに来てくれると信じて・・・・。


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