スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Short story


  - クリスマスの思い出 -
    (幼き頃の記憶)

                      【第二章】





 その日の夜。暖かい布団の中に潜り込んでるのに、眠気が来ないパニはベッド中で
 一人ごろごろしながら明後日にはやってくるクリスマスの事を考え込んでいた。
 今まで家族としか過ごして来なかったクリスマスが一変するのだ。どんなパーティーをす
 るのか、今からワクワクが止まらない。
 そして、メインイベントとしてはクリスマスプレゼント。
 毎年パニとアムニスの欲しい物が必ずと言っていいほど、眠っている間に枕元へ届けら
 れていた。
 だが、今年は孤児院生活。
 しかも、必ず「サンタさんへ」と、欲しい物のお手紙を書くと言う事前イベントがあったが、
 今年はそれがない。


(・・・サンタさん。あたしのほしい物・・・わかってるのかなぁ)


 「むーっ」と唇を尖がらせながらも布団に包まる。早く寝なくてはと必死で目をつむってみ
 るものの、逆効果と言わんばかりに目が冴え始めてしまった。


(ぅ~・・・。何かあったかい物でも飲んでこよぅ)


 同室の子達を起こさないように、そーとそーと、物音をさせないで部屋を後にするパニ。
 真っ暗な家の中を壁づたいにずりずりと歩きながら、台所へと向かい、冷蔵庫を開けて
 みる。様々な食材に目移りしそうになりながらも、ミルクを取り出し温め始める。
 

「・・・・さむっ」


 暖炉に火が燈ってない部屋は極寒の地のように冷え込んでいた。
 目の前の窓辺にまで雪が積もっているほどだ。寒いのは当然だろう。
 パニはミルクが温まるまで台所をウロウロしていた。
 とてもじゃないがじっとしていられない。


「なに・・・やってるんだ?」


 そんなパニの背後から声をかけられ、反射的にビクリと体が震える。
 おずおずと後ろに振りかえると、台所の入口の壁に寄りかかり、大きな白い羽をパタパ
 タさせながらこちらを見ている少年がいた。
 彼の名は「ベルーガ」
 この孤児院では一番年上になるタイタニアの少年だった。そして、パニがもっとも苦手と
 する人物でもある。


「ぁ・・・」


 突然ベルーガが現れた事に驚きを隠せなかったパニは返答に詰まる。
 そんなパニの様子を察してか、無言でパニの横に立つと、火にかけている鍋の中に視
 線を落とす。


「ふーん。ホットミルクか・・・。これ一人分?」


 ベルーガの質問に対して頭を上下に動かすしか出来ないパニ。
 無意識に体も後ろへ後ろへと下がっていく。


「んだよ。・・・逃げることないだろ?それよりミルク貸せよ。俺も飲むから」


 「早くしろよ」と言わんばかりの表情でパニを見やる。
 そんなベルーガに慌てて、冷蔵庫からミルクを取り出し無言で手渡す。
 せっかく温めかけていたミルクに冷え冷えのミルクを足され、ちょっとムッとなったパニだ
 ったが、反発する勇気はなく、ベルーガの行動をただただ見つめるだけだった。
 再度、ミルクが温まるのを待つ二人だが、とくに会話もなく、冷たい空気だけが辺りを漂
 っていた。


「・・・暖炉・・・点けないのか?」


 さすがにベルーガも寒くなってきたのだろう。台所の隅っこに逃げたパニへと声を掛け
 る。


「つ、点け方・・・知らないし・・・・」


 もじもじと視線を横に逸らしながら、なんとか答えたパニの回答に、目を丸くしながら凝視
 するベルーガ。
 数分程、無言でパニの困惑してる様子を眺め、「ふぅ」と小さな溜息をつく。


「知らなかったのか。意外だな。・・・・・・来いよ。教えてやる」
「・・・・」


 暖炉の前にしゃがんだベルーガが手招きをするのを見て戸惑ったパニだったが、この寒
 さには勝てない。急ぎ足でベルーガの横に座り込むと、手渡されたマッチで言われた通
 りに火を燈し始める。パチパチと薪が焼ける音が聞こえ、あっと言う間に冷え切っていた
 部屋に暖かい空気が漂い始めた。暖炉の暖かさに体の緊張も解け、思わず「ふぅ・・・」
 と溜息が漏れる。


「ほらよ。あと、これも被っとけよ・・・」


 いつの間にか台所に移動していたベルーガが、熱々になったホットミルクを運んできた。
 それと一緒に、薄手の毛布をパニの頭の上へと落とす。


「・・・ぁ・・・あり・・・がとぅ・・・」


 渡された毛布に包まりながら、ホットミルクを口にする。
 時折、ベルーガの様子を伺いながらも、とくに会話もせず時間だけが過ぎていった。
 そんな無言の空間に堪えれなかったのか、ベルーガが口を開く。


「なぁ・・・。なんでそんなに俺の事が怖いんだ?」
「っ!?」


 あまりにも直球な質問に体が飛び跳ねそうになる衝動をグッと抑え、横に居るベルーガ
 へと驚きの視線を送る。
 ベルーガ本人も困っているのか、苦笑いをしながらカップを口元へ運ぶ。


「おまえだけなんだよなー。俺から逃げるの・・・」


 暖炉の火を見ながら話すベルーガの表情をチラチラと見ながら、パニも答えを探す。
 これと言った決定的な何かがあって嫌っているのではないのだ。
 ただ単に「苦手」としか説明のしようがないのである。


「・・・んー・・・なんでっていわれても・・・。なんかベル兄・・・怖いんだもん。ことばづかいとか・・・ほかのタイタニアの人とくらべて・・・あらいし・・・」
「・・・・ふむ」
「目つきも・・・悪いって言うか・・・するどい?・・・し・・・あんまり笑わない・・・」
「ははっ・・・さすがに顔のパーツは直せねーしなぁ。まぁ確かに、本来なら温厚で優しいタイタニアってイメージがあるみたいだが・・・こんな、俺みたいな口の悪いタイタニアも居るってことだ!慣れろ。パニ!」
「・・・ぅー」


 毛布の中に包まって小さくなってるパニの頭を、豪快に撫でながら笑ってみせるベルー
 ガに少々不満の表情を見せながらも必死に納得しようとするパニ。
 別に悪いヤツでは無いのだから、ベルーガの言う通り「慣れる」しか方法が無いのだろ
 う。ならば会話をするのが一番。と考えたパニは、先程から考え込んでいたクリスマスの
 事を口にしてみた。


「・・・ベル兄は・・・さ。サンタさんになにをたのむの?」


 突然の質問に「は?」と不思議そうな表情を見せるベルーガ。
 

「だからぁ~、クリスマスプレゼントだよ。サンタさんになにをお願いするのかなぁって・・・。あとね!どうやってお願いするのかなって。サンタさんにお手紙かかなくても・・・・ちゃんと、ほしい物とどけてくれるのかなぁ?」


 嬉しそうに話すパニの表情とは違い、きょとんとした表情を見せるベルーガ。
 次第に口の端がヒクヒクと動き出し、声を出して笑い始めた。


「な、なに!?」


 予想外なベルーガの反応に困惑するパニ。
 持っていたカップを床に置くとベルーガの腕を取りグイグイと服を引っ張り始める。


「なによー!なにがおかしいのー!?」
「は・・・あはははは!いや・・・まさか!おまえがサンタクロース信じてるなんて思ってなかったぜ!あははは!」
「?」


 ベルーガの言ってる言葉を理解する事が出来ないパニはさらに混乱してゆく。


「ベル兄なに言ってるのー?クリスマスプレゼントはサンタさんがくれる物でしょ?」
「うはははは!おまえこそ何言ってるんだよ。サンタなんて居ないんだぞ?プレゼントを用意してくれるのは大人。父さんや母さんのことだぜ?」
「え?」
「ここじゃセレス母さんとか、町のみんなが用意してくれるんだけどな!あまり高価な物は期待しないほうがいいぜー」
「・・・・うそ・・・だ」
「んな事で嘘ついてどーすんだよ。あれだな。おまえがさっき言ってたお手紙ってヤツも、おまえの両親がおまえらの欲しい物を聞き出す為にやってたんだろ~なぁ・・・」


 まだ笑いが止まらないのか、クククっと声を噛み殺しながらも肩を震わせるベルーガ。
 パニはその様子をじっと見つめながら、羽織っていた毛布を握り締める手に力が入って
 いく。


「・・・・るもん」
「ん?」


 やっと笑いが治まったのか、ぬるくなったミルクを飲み干し一息入れるベルーガに向かっ
 てボスッと羽織っていた毛布を叩きつけるパニ。
 キュッと唇を噛み締め、泣き出しそうな感情をグッと押し込めながらベルーガを睨みつけ
 た。


「いるもん・・・。サンタさんは・・・ちゃんと来てくれるんだから!ベル兄のバカ!だいっきらい!!」


 そう言って、その場から逃げ出したパニ。
 駆け足で自分の部屋に戻り、いつものベッドに潜り込むと力いっぱい目を閉じ、先程聞
 いたベルーガの言葉を必死に忘れようとした。
 瞳に涙を溜めながらも、全身に力を入れ、布団に包まりながら体を小さくしてゆく。
 そして、自分に暗示でもかけるかのように、繰り返し繰り返し同じ事を考え続けた。


(お父さんやお母さんがいなくても・・・ちゃんと来るんだから・・・・)


(ちゃんと・・・プレゼント・・・持ってきて・・・・くれる・・・は・・・ず)







 そして、いつの間にか眠りについたパニとは別に、暖炉の前で眠りにつく事ができない
 ベルーガの姿があった。
 パニが投げつけた毛布の上に横になり、天井を見上げ大きな溜息をつく。


(・・・・特別扱いなんか・・・してやらねぇ。これでいいんだ。これで・・・)


 ベルーガもパニと同じように、自分に言い聞かせる。
 クリスマスの前日にパニの夢を壊すような事をしたが後悔はしてない・・・と。
 例え、いらぬお節介だとしても、今年のクリスマスで嫌でも見てしまう現実を、先に教え
 たまでだと・・・。
 
 それでも、必死に涙を堪える幼いパニの表情は、ベルーガの胸を締め付けていた――。


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

相続 会社設立

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。