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Short story

 
 - クリスマスの思い出 -
    (幼き頃の記憶)

                      【第三章】







12月24日 クリスマス・イヴ


 待ちに待ったクリスマス当日。朝から町中は賑わっていた。当然、孤児院にいる子供達
 もソワソワとしていて落ち着きがない。
 セレスを中心に、夜に行うクリスマスパーティーの準備が着々と進んでいた。
 沢山のご馳走を作るセレスやそれを手伝いに来た町の人達。
 クリスマスソングを歌いながら楽しそうに部屋やツリーに飾り付けをする子供達。
 当然、パニとアムニスも皆と同じように飾り付けをしていた。
 そんな中、飾り用のオーナメントを手にしたままボーっとするパニの姿が見られた。
 一昨日の夜にあったベルーガとの出来事が、パニの中で大きな不安材料となり、素直
 にクリスマスを楽しめないでいたのだ。
 時折、頭を左右に振って、何かを忘れようとするパニの姿を無表情のベルーガが遠くか
 ら眺めては大きな溜息をついてた。
 彼もまた、あの夜のパニの顔が忘れられず、気分が晴れないままだった。
 後悔はしないと思ったものの、あの日から会話はおろか、目さえ合わせてくれなくなった
 パニの行動に少々寂しいものを感じていたベルーガ。何度かちょっかいを掛けてみるも、
 すぐにその場から逃げ出す始末だ。


(本格的に嫌われちまったかなぁ・・・)


 肩を落としながらも、「仕方なのないこと」と割り切り、夜に向けての手伝いに勤しんでい
 た。

 そして夜。

 広間に並べられた大きなテーブルの上に普段見ないような料理や飲み物が沢山並べら
 れていた。中でも一際目立つ七面鳥の丸焼き。しかも1個ではなく2個、3個と登場し、
 子供達の歓喜が沸き起こる。さらに、子供達が大好きなケーキも登場する。定番の苺の
 ケーキに加えブッシュドノエルやアップルパイ等・・・。
 様々なケーキに視線を泳がせ、満面の笑みを見せながらテーブルを囲み始める。


「・・・すごーい。ねえちゃん!ねえちゃん!すごいねー!」
 
 
 初めて見る盛大なご馳走に興奮したアムニスは、隣に立っていたパニの手を力いっぱい
 握り締める。そしてパニも、目の前に広がる光景に目を輝かせない訳がない。胸の中に
 広がる、言葉に表せない程の興奮を抑えつつ、アムニスと笑い合う。
 

「うんうん!すごいね!ごちそうがいっぱいだよ!おいしそ~♪」


 テーブル周辺に用意されている椅子に腰掛け、パーティーの始まりを今か今かと待つ
 子供達。そして、セレスと町の人達が手に持っていたクラッカーが一斉に鳴り響く。


「「メリークリスマス!」」


 大人達の歓声と同時にワッと広がる子供達の声。
 皆、好き好きに、目の前にある料理へと手を伸ばし、大人達は七面鳥やケーキを切り分
 けながら一人一人に配り歩き、楽しそうに会話を続ける。
 パニもアムニスも、そんな楽しい雰囲気に飲まれ、笑顔を絶やす事はなかった。
 食事も半分以上が終わり、子供達だけでのクリスマスソングの合唱。
 大人達からの人形劇場等、時間も忘れ、様々なイベントが繰り広げられた。
 そして・・・パーティーも終わりに近づいた頃、子供達が心から楽しみにしていたクリスマ
 スプレゼントの配布が始まった。
 セレスの手から一人一人に渡されるクリスマス用にラッピングされた箱がパニの目に飛
 び込んできた。
 高鳴る胸の音がパニを緊張させる。
 次々に手渡されるプレゼント箱を嬉しそうに眺める子供達。
 貰った直後に開封しているのだろう。
 「やったー!」と飛び跳ねて喜ぶ声が聞こえてくる。
 そんな声を聞きつつ、いよいよパニとアムニスの順番がやってきた。


「はい。これがアムニス。こっちが・・・パニ。メリークリスマス」


 優しい笑顔で二人の顔を交互に見ながら、手に持っていたプレゼント箱を渡す。


「「ありがとう!」」


 パニもアムニスも満面の笑みを見せながら、渡された箱を大事に抱え込む。
 プレゼント箱を持ったアムニスは、自分と同い年の友達の元へ行き、そそくさと箱を開け
 始める。
 その様子を見届けたパニも、自分が貰った箱を開けようとし手が止まる。
 にこやかにしていた表情が一瞬にして曇り、戸惑いが走った。
 ベルーガの言葉が瞬時に蘇り、パニの不安が一揆に膨れ上がったのだ。


(・・・・これ・・・本当に・・・あたしがほしいって思ってる物がはいってるの・・・かな・・・)


 箱に付いていたリボンを外したものの、蓋を開ける勇気が出ず、目の前に置いたまま箱
 と睨めっこを始める。
 そんなパニの様子に気が付いたセレスが声を掛ける。


「パニ?どうしたの?・・・・箱が開かないのかしら?」


 セレスの言葉にどきっとしながらも、頭を左右に振り、慌てて箱に手を伸ばす。


「い、今からあけるとこ!」


 そう言って、勢いまかせに箱を開け、中身を取り出した。
 プレゼントの中身はツリーやサンタを模ったクッキーと白色のふわふわしたミトンが
 入っていた。


「あら。可愛いミトン。パニにぴったりね~」
「・・・・・・・」


 横から覗きこむセレスの言葉に無言のままのパニ。
 箱から取り出したクッキーとミトンを持つ手が自然と振るえ始め、表情も失望の色が見え
 始める。


「・・・が・・・う・・・」
「パニ?」
「ちがう・・・。これ・・・・あたしがほしい物じゃ・・・・ない・・・・」


 ぼそり、ぼそりと言葉を放ち、瞳には涙も浮かべ始めた。


「こんなの・・・・あたしがほしかった物じゃないもん!マフラーが・・・うさぎさんのマフラーがほしかったのに!!!」


 怒りまかせに、手に持っていたクッキーとミトンをセレスに向かって投げつける。
 瞳からも大粒の涙を流しながら、肩を震わせ泣きじゃくり、その場に立ち尽くしてしまっ
 た。戸惑い気味のセレスが「泣かないで」とパニを諭そうとするが、その言葉は聞き入れ
 てもらえず、癇癪を起こすばかり。
 
 
「だから言っただろ。サンタなんて居ねーんだよ!一人だけ我が儘なんか言うじゃねーよ!」


 泣きじゃくり、セレスが伸ばす手を払い除けるパニに、追い討ちをかけるかのように聞こ
 えてきたベルーガの声。
 振り返り、ベルーガを睨みつけたものの、何も言い返せない自分に苛立ちが募る。


「ベル!」


 滅多に声を荒げないセレスが、ベルーガに向かって叱咤する。
 それと同時に、セレスに抱きしめられていたパニは、自分を拘束している腕を払い除け
 玄関に向かって走り出した。


「パニ!待ちなさい!」


 セレスの言葉を無視し、パニは外に飛び出してしまった。


「・・・・ベル。私はパニを連れ戻してくるから、他の子の事、頼むわよ?」


 ベルーガの肩を力強く握りながら、しっかりと視線を絡めるセレス。
 とくに怒っていると言う訳では無さそうだが、普段のにこやかな表情はすっかり消え去っ
 ていた。
 バツが悪そうにするベルーガだったが、セレスの頼みだけは断れない。
 渋々と頷き、上目遣いにセレスの表情を伺う。
 どこか寂しげな表情を見せたセレスに戸惑うベルーガだったが、自分が放った言葉も酷
 いものだと反省していた。
 
 セレスもそのことは充分理解していた。
 パニの事を思ってこその言葉だったのだろうと・・・。ただ、タイミングやいい方が悪かった
 だけだ・・・と。
 既に、ベルーガ自身から反省の色が滲み出ていたのに気づいたセレスは、必要以上に
 ベルーガを叱ろうとはしなかった・・・。
 
 子供用の防寒具を用意したセレスは自分のコートを羽織り、足早に家の外へと出てい
 く。
 幸い、雪は降っていなかったものの、気温の低さはかなりのものだった。
 急いで見つけないと、薄着のまま出ていったパニは風邪を引いてしまうだろう。
 玄関先から続いている、雪の上に残った小さな足跡を頼りに、セレスはパニの元へと急
 いだのだ。



        ***********************



 孤児院からはそんなに離れていない川沿いの道を、トボトボと歩くパニの姿があった。
 涙は止まらず、泣きじゃくり、流れ出る涙を必死に服の袖口で拭き取りながらも、暗い夜
 道を歩き続ける。


(ベル兄の・・・ばかっ!)


 そんな事を心の中で叫びながらも、ベルーガの言った言葉を理解しようとしていた。
 いや・・・本当は心のどこかで気づいていたのだ。サンタクロースの正体はお父さんや
 お母さんだと言うことに・・・。
 もし、クリスマスプレゼントが、毎年と同じように自分の欲しい物が届くのであれば、自分
 の両親はまだ、自分達の事を見捨てていないのだと思えるから・・・。そうやって、いつか
 迎えが来ると信じて待っていられるから・・・と。
 幼いながらも、自分なりに必死で考え出した答えがそれだったのだ。しかし・・・その考え
 とは裏腹に、現実は非情だった。
 パニが手にしたクリスマスプレゼントは、欲しかったうさぎのマフラーでは無く、白色のミ
 トン。
 それは・・・予想以上に衝撃的で、何よりも、「自分は捨てられた」と言う現実を突きつけ
 られた瞬間でもあったのだ。

 失望の色は大きかった。
 もう二度と、昔のような家族四人での生活は戻って来ないのだと・・・。
 父親の大きな手で頭を撫でられる事も、母親の温かい腕の中で眠る事も出来ないのだ
 と・・・。

 雪道を歩くパニの足が自然と止まり、今まで以上に涙が溢れ出てくる。
 二度と自分の両親に会えない寂しさや悲しみ、孤独感がパニの心を襲い、脱力感が
 生まれる。
 寒さも相俟って、その場に蹲りながら、パニは涙を流し続けた・・・。


「ヒック・・・と・・・さん・・・・ヒック。おか・・・・さん・・・」


 来ないと分かってはいるが、呼ばずにはいられなかった。
 そんな時、パニの後ろからふわりと温かい物が覆いかぶさってきたのだ。
 それは、パニの跡を追ってきたセレスの腕だった・・・。


「みーつけた!」


 パニの冷え切った体をぎゅーと抱きしめ、髪の芯まで冷えた頭に自分の顔を擦り付け
 る。突然やってきた人の温もりと、消え去ってゆく孤独感に、止まりかけていた涙が再度
 溢れてくる。小さく折り曲げていた体をセレスに向け、胸の中に飛び込むパニ。
 そんなパニをさらに力いっぱい抱きしめ、背中や頭を優しく、優しく撫で始める。


「・・・ごめんね。寂しい思いをさせて」


 ぽつりと・・・小さな声で放ったセレスの言葉に、パニは声を出して泣き始めた。
 それは、孤児院に来て初めて見せる姿だった。


「うわああああん!おとーさん!おかーさーん!」


 何度も何度も泣き叫び、セレスの腕に中に顔を埋め体中を震わせる。
 そして、パニを抱きしめるセレスも、目に薄っすらと涙を浮かべていたが、パニはその事
 に気づいてはいなかった・・・。
 自分の涙を軽く拭き取ったセレスは、持っていた子供用の防寒具でパニをしっかりと包
 み込むと、


「さぁ、帰りましょう」


 と、笑顔を見せ、パニを抱きかかえたまま、その場を後にしたのだった。



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